脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質の値が正常範囲を超えたり、低下したりする状態をいいます。自覚症状がほとんどありませんが、放っておくと動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。脂質異常症は「サイレントキラー」とも呼ばれるほど、油断できない病気です。
脂質異常症の診断には、空腹時に採血して行う血液検査が必要です。血液検査では、以下の4つの項目を測定します。
- 総コレステロール(TC):血液中に含まれるコレステロールの全量
- LDLコレステロール(LDL-C):動脈硬化を促進する「悪玉コレステロール」
- HDLコレステロール(HDL-C):動脈硬化を防ぐ「善玉コレステロール」
- 中性脂肪(TG):エネルギー源となる脂肪酸
これらの値が基準値を超えたり、低下したりする場合、脂質異常症と診断されます。また、LDL-CとHDL-Cの比率であるLDL/HDL比も重要な指標です。この比率が高いほど動脈硬化のリスクが高くなります。
原因
脂質異常症の原因は、特定の病気によるものと、生活習慣によるものに分けられます。特定の病気によるものを二次性脂質異常症、生活習慣によるものを本態性脂質異常症と呼びます。本態性脂質異常症は、日本人の脂質異常症の約90%を占めると言われています。
本態性脂質異常症の原因としては、以下のような要因が挙げられます。
- 高カロリー・高脂肪・高塩分などの食生活
- 運動不足
- 喫煙
- 飲酒
- ストレス
- 遺伝的素因
これらの要因は、血液中のコレステロールや中性脂肪の生成や代謝に影響を与えて、血液中の脂質値を変動させます。これらの要因を改善することで、脂質異常症の予防や治療に効果が期待できます。
二次性脂質異常症の原因としては、以下のような病気が挙げられます。
- 糖尿病
- 甲状腺機能低下症
- 腎臓病
- 肝臓病
- 副腎皮質ホルモン分泌異常
- 妊娠
これらの病気は、ホルモンや代謝などによって、血液中の脂質の生成や分解に影響を与えて、血液中の脂質値を変動させます。これらの病気を治療することで、脂質異常症も改善される場合があります。
治療
当院では、脂質異常症に対し総合的な治療を行っております。まずはご自身の血液中の脂質値を知ることから始めましょう。空腹時に採血して行う血液検査で、コレステロールや中性脂肪などの値を測定します。
次に、脂質異常症の原因や合併症の有無を調べるために、以下のような検査を行います。
- 尿検査
- 血液生化学検査
- レントゲン
- 心電図
- 心臓エコー検査
- 頸動脈エコー検査
- CAVI(動脈硬化度測定)
これらの検査によって、脂質異常症の原因や合併症の有無、重症度などを判断し、治療計画を立てます。
脂質異常症の治療には、生活習慣の改善と薬物療法があります。生活習慣の改善では、以下のようなことを指導します。
- カロリー制限や食事バランスに注意する
- 動物性脂肪や塩分を控える
- 魚や大豆製品などを積極的に摂る
- 適度な運動をする(週に3回以上、30分以上)
- 喫煙をやめる
- 適度な飲酒にする(男性は1日エタノール30ml、女性は15ml以下)
- ストレスを減らす
- 睡眠時間を確保する
生活習慣の改善だけでは血液中の脂質値が下がらない場合や、二次性脂質異常症の場合は、スタチンやフィブラートなどの薬を処方します。薬の種類や量は、個々の状態に応じて調整します。
脂質異常症の治療は、一度始めたら継続する必要があります。薬をやめたり、生活習慣を乱したりすると、血液中の脂質値が再び上昇してしまう可能性があります。脂質異常症は、自覚症状がなくても、動脈硬化を進行させて、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。治療を継続することが、これらの合併症の予防や発症後の予後の改善につながります。
脂質異常症は自覚症状がないことが多いため、定期的な健診が必要です。もし気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。