膠原病とは?
「膠原病」とは、関節や皮膚だけではなく、肺、腎臓、肝臓、心臓、脳、眼、耳、鼻など、いろいろな臓器に異常をおこす病気の総称です。「膠原病」のなかにはたくさんの病気があり、それぞれの病気が同時に起こることもあります。
例えば、関節リウマチとシェーグレン症候群、橋本病(慢性甲状腺炎)は合併しやすいことが知られています。膠原病に共通して起こりやすい症状には、発熱(不明熱)、全身倦怠感(だるさ)、関節や筋肉の痛み、皮疹、レイノー症状(手や足のゆびの冷感)、しびれ、息切れ、咳、頭痛、胸痛、腹痛などがあります。また口内炎、難聴、手足の浮腫みや腫れ、脱毛、リンパ節腫脹、下痢や便秘、背中(首や腰)の痛み、ドライアイやドライマウスなどもあります。
膠原病患者さんのからだの中では、自分自身の臓器を構成する成分(細胞やたんぱく質など)を攻撃するリンパ球や抗体(=自己抗体)が作られてしまいます。そのため膠原病は自己免疫疾患のなかの一部ということもわかっていますが、根本的な原因は、残念ながらまだわかっていません。
関節リウマチも膠原病のなかの一つの病気ですが、日本での有病率が100~150人に1人と患者さんの数が一番多いこと、治療方法が他の膠原病と異なること、などの理由から、「リウマチ・膠原病」や「関節リウマチ・膠原病」というように、多くの場合、関節リウマチだけが独立して記されています。
また、膠原病と同じような症状がおこる病気で、自己炎症性疾患というものがあります。発熱、関節痛、筋肉痛、筋肉痛、発疹、腹痛、胸背部痛、頭痛などが1日~数週間持続し、自然に治まりますが、4~6週間隔という周期性をもって症状が起こります。この病気が膠原病と大きく違う点は、何も症状がない時には元気で、血液検査も正常であるということです。自己免疫疾患と自己炎症性疾患の両方の側面をもつ膠原病もあるため、さまざまな病気を鑑別に入れて検査をすることが必要です。気になる症状があれば、気軽に相談してください。
関節リウマチ
1つ以上の関節が腫れたり、痛みが続いたりする病気です。手や足の全体のこわばりやだるさとして感じる患者さんもいます。昔は「リウマチでは関節が変形する」というイメージでしたが、近年の診断や治療の進歩によって、10年、20年と変形が起こらない患者さんが増えています。
もちろん、変形してしまった関節を修復するための治療(手術)もあります。できるだけ早く発見し、早く治療をしたほうが治療の効きがよく、変形も起こりにくいといわれています。血液検査だけではわかりにくい関節リウマチ(血清反応陰性関節リウマチ)もあるため、リウマチ専門医の診察と、診断の補助として関節エコーも有用です。気になる症状があれば放っておくのではなく、早めの受診をおすすめします。
- 原因
- 環境的な原因(タバコ、歯周病、腸内細菌など)と遺伝的な原因が複雑に絡んで、関節リウマチを発症します。
- 当院で行うことができる検査
- 関節の視診・触診、血液検査(リウマトイド因子、抗CCP(シトルリン化ペプチド)抗体)
関節超音波(関節エコー)検査、関節レントゲン検査、CT検査など。
- 治療
まずは抗リウマチ薬によって関節リウマチの進行を抑えます。抗リウマチ薬のなかで第1選択薬はMTX(メトトレキサート)という週1~2回内服する薬です。しかしながら、吐き気や倦怠感、脱毛などの副作用が出てしまう場合は患者さんの年齢や合併症(間質性肺炎や肝臓・腎臓の機能が悪いなど)によっては使うことができないともあります。またMTXは妊娠中や授乳中にも使用できません。このお薬によって活動性が抑えられない場合には他のお薬に変更したり、いくつかの治療を組み合わせたりします。
現在は生物学的製剤やJAK阻害薬というお薬もたくさんの種類がありさまざまな選択肢のなかで、患者さんそれぞれに合ったオーダーメイドの治療ができるようになりました。活動性を抑え、寛解(関節リウマチが落ち着いた状態)になれば、全身の状態をみながら薬を減らすこともできます。痛みがあるけれども仕方がない、のではなく、痛みがないのが当然で、健康な人と同じように生活できるように治療を組み立てることが大切です。
膠原病
シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、血管炎症候群(高安病、ANCA関連血管炎など)、若年性特発性関節炎(JIA)などがあります。
10~20歳代で発症する病気、中年、高齢になってから発症しやすい病気、妊娠中や産後に悪くなりやすい病気など、病気によって特徴があります。関節痛や筋肉痛を起こすことも多く、関節リウマチと間違えやすいこともあるので注意が必要です。
- 当院で行うことができる検査
- 血液検査(抗核抗体、自己抗体、補体など)、エコー検査(心臓、腹部、関節など)、画像検査(レントゲン、CT検査など)。
- 治療
膠原病患者さんのからだの中では、本来は自分を守るために細菌やウイルス、腫瘍という自己以外の異物を攻撃する免疫系が異常に働いている状態であり、過剰に働いている免疫を沈めることが治療の中心となります。もちろん病気の活動性によっても異なりますが、ステロイドや免疫抑制剤を使うこともあります。
ステロイドは病気を抑え込むには効きが早くていいお薬なのですが、長期間使うと合併症が出やすいため、病気の種類によって免疫調整薬や免疫抑制薬、生物学的製剤などを組み合わせて、ステロイドをできるだけ早く減らすことができるように治療を行います。
自己炎症性疾患
周期的に発作(1~2か月に1回、数日単位の発熱や関節痛、胸痛、腹痛、息苦しさ、皮疹、難聴など)が起こります。発作が何もない時は普通の生活を送ることができますが、発作を繰り返すことによってアミロイドの沈着が起きることで骨盤内の臓器の癒着などを起こし、不妊症などの原因になりえます。
子供さんにも起こる病気ですが、大人では10~30歳台での発症が多く、月経(生理)と関連して発作が起こる人もいます。家族性地中海熱(FMF)、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、TNF受容体関連周期性症候群的(TRAPS)などの病気があり、それぞれの病気によって特徴的な発作(熱の出方や症状)が出ます。
- 当院で行うことができる検査
- 血液検査(補体価、アミロイドA蛋白、遺伝子検査(信州大学、久留米大学、かずさ研究所などに依頼)など)、画像検査(レントゲン、CT検査など)。
- 治療
- 家族性地中海熱の場合、尿酸の薬であるコルヒチンというお薬が第一選択薬になります。副作用に肝障害や腹痛・下痢、白血球低下があり、副作用によって薬の量が十分に増やせない場合や十分量内服しても効果がない場合にはカナキヌマブ(イラリスⓇ)という注射薬を検討します。
リウマチ・膠原病合併妊娠
関節リウマチ、膠原病などをもつ患者さんのなかには、幼少期から、また若年で発症する患者さんもいらっしゃいます。病気があったら結婚や妊娠ができないのではないか、妊娠中に悪くならないかが心配、薬をのんでいたら赤ちゃんに影響するのでは…などたくさんの疑問や不安があると思います。妊娠ができることの前提として、「病気が安定すること」が大切です。病気が不安定なときに妊娠してしまうと赤ちゃんにもお母さんにも大きな負担がかかります。そのためには「妊娠に向けての治療計画」や「家族計画」をたてる必要があります。いつに子供が何人ほしいか、子供は今考えていないから避妊をする、など計画を立てていきます。
母性内科外来では、膠原病などの内科的疾患を合併した若い患者さんの結婚から妊娠、出産、育児までをサポートしています。患者さんがどうしたいか、そのためにはどうしたらいいか、を一緒に考えます。また産婦人科の先生や近隣の先生(内科や整形外科の主治医の先生)と連携し、治療を行っています。不妊・不育などの原因として膠原病などの内科的疾患が合併していることもあり、膠原病といわれたことがなくても、妊娠や授乳中のお薬のこと、何かしら妊娠に関して将来の不安があるなど、気軽に受診してもらえればと思います。